ミュージカルJtRを観てきました。
チェコで創作されたミュージカルを原作に韓国で大幅にリメイクされたのが大ヒットし、待望の日本版初演。
今回、お目当ての万里生さんはシングルだったのでWキャストはまったく異なる組み合わせを選んで観劇してきたよ。組み合わせはこちら。
正直に言えば、『衝撃のミステリーミュージカル』という宣伝文句に対し、ミステリーとしては弱いと感じた。多々ある医学的にそれはどうなのよという点は突っ込む方が野暮だとは思うものの、おそらく一番の衝撃にしたいんであろう『ダニエル』=『(復活した)ジャック』という部分が予想できてしまうのが勿体なかったな。まあ、それはあらゆる物語を読んできたこちらが「衝撃というからにはこういうことが起こるんだろう」と、ある程度想定してしまうのがいけないとも言えるのでメタ的な問題の気もするのですが、それを飛び越えて吃驚させてほしいんですよね。その点では終盤~ラストにかけての『♪カオス』はかなりエキサイティングですごく良かった。
とは言え、わかったうえでも「ダニエル=ジャック」の種明かしの『♪俺がジャックだ』を最高に盛り上げてくれるのでミュージカルとしてすごく良かったです。まず曲がカッコよく、登場人物の心情や過去を描ききらないところ(アンダーソンの過去をもっと知りたい)も二次創作もとい考察が捗るであろう楽しい作品でした。
ダニエルの愛
木村ダニエル→小野ダニエルの順で観たのだけど、ダニエルに感じる印象どころか事件の全容まで違って見えて驚いた。
木村ダニエルでは、グロリアを救うためという動機は殺人行為の免罪符であって、殺人衝動そのものは元々ダニエルの中にあったものではないかと思った。そうなるとなぜすぐ移植しないのかだとか血液型がどうとかは関係ない、目的は殺人なので。彼の最初のトリガーはジャックと出会ってしまったことで、最後のトリガーはグロリアを救わなければという免罪符を得てしまったことだと感じた。
そんな感想を抱きつつ続いて小野ダニエルを見ると、彼は初めての恋をしてグロリアのために道を踏み外してしまった男だった。自分がやってしまったことを自分自身でも理解できておらず、ジャックに罪をなすりつけなくては生きていけなかったように見えた。
回数を重ねて観ていないのでこの違いがどこからきているのか判断はできないが、性格面も木村ダニエルは内向的に、小野ダニエルは外向的にと、かなりキャラクターの色が違って見えたのが面白かったな。
騙り手
この物語の語り手はアンダーソンであるのだが、果たしてアンダーソンの語る物語は、作中本当に起こったことなのだろうか、なんてことも感じた。
彼は薬物中毒者である。ある程度までは実際起こったことを語っているのだろうけど途中からは自分の頭の中の幻覚を語っているのではないか。というのも、ラストの見せ場である『♪カオス』が妙に気持ち悪いんですよね。この気持ち悪いというのは、気味が悪いというか、背景がぐんにゃりしているように感じるというか、麻薬中毒者の幻覚ってこんな感じなのではないかな、などとも思った。
ミュージカルの良作をどう定義するかは人それぞれだとは思うが、私は「曲が良く耳に残る」「キャラクターに魅力がある」「観劇後も物語のことを考えてしまう」の三点が重要だと考えていて、その点でJtRはすごく好みのミュージカルだった。
これみんな自分の推しにダニエルを演ってほしくなるんじゃないかな。私も風早巽*1にダニエルを演ってみてほしいもんね!
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公式が募集していたので久しぶりにFAを描いた。木村ダニエルのイメージです。
Daniel / Tatsunari Kimura
— そうび (@_sou_bi_) 2021年9月24日
#ジャックファンアート#ミュージカルJTR pic.twitter.com/XKI7IxUV7o
*1:二次元です